『イン・ザ・プール』 奥田 英朗・著
直木賞作家、奥田英朗の短編小説。精神科医、伊良部シリーズの初刊で、直木賞は二作目の『空中ブランコ』。シリーズ最新作は三作目の『町長選挙』。
去年、後輩ドラマーのU君にすすめられて読み始めた奥田英朗。最初に読んだ『サウスバウンド上・下』がまず面白かった。それもその筈、何かの記事で奥田英朗さんがらもさんの影響を受けていると知り納得であった。僕はこの手の本が基本的に大好きである。難しい事を考えずに楽しめるものは良い。程よくシモなネタもちりばめられていて○。しかし、誰もが持っていそうな人間の煩悩や妄想や人間の俗物的な部分をうまく扱っていて、どこかブラックな側面もあり、襟を正す気持ちにもならなくもない。基本的に素直に楽しめる短編集。
患者と伊良部の絡みも絶妙だ。ひょっとすると、伊良部のような人間が世の中を知り尽くしている存在なのかも知れない。
ちなみにこのプールに赤ちゃんが浮かぶカバー写真。何となく予想はしていたが、ニルヴァーナの2ndアルバム「ネヴァーマインド」をイメージしている、とは奥田氏本人のコメントで、どうやら事実のようだ。ベイビーとはいえ露な本家と異なり、無事隠れており、少し安心。
併せておすすめは
『怪笑小説』
『毒笑小説』
『黒笑小説』
いずれも東野圭吾・著
『イン・ザ・プール』(文春文庫)
奥田 英朗・著
★★★★☆