コラムのしりとり化に伴い『世襲』→『うんこ』

勝手に師と仰ぐ中島らも氏の『しりとりえっせい』を模して今回からしりとりコラムを始めようと思う。
前回の『世襲』の『う』から早速『うんこ』なんて言うお下劣なネタでお恥ずかしい限りだが、らもさん自身も著書『しりとりえっせい』の中で取り上げられておられるトピックだけに是非触れておきたい。何故、是非触れておきたいのかも謎だが。。
以下、『うんこ』=『彼』と表記する事にする。

数年前、大阪地下鉄谷町線中崎町駅で中身の入った札束大の銀行袋が発見された。警察が出動したのだったか届けられたのだったか、いずれにせよそこそこの騒ぎになったらしいのであるが、いざその札束袋を空けたところ、中からは固形カレールーの如く見事なまでに象られた『彼』が収まっていたという。人間の思考のマニュアルにはまず存在しない状況である。大金(少なくとも『彼』ではないもの)を予想していたであろう警察および地下鉄関係者諸兄の反応がどんなものだったかは色々と推測し得るわけだが、結果的に無言の『彼』は嗅覚に訴えかける、もしくは形状を変化させないという新手のびっくり箱となったわけだ。後日スポーツ新聞やワイドショーで取り上げられるに至ったが、恐らく首謀者は草葉の陰でさぞかしほくそ笑んでいたことだろう。これは中身が『彼』だったという事がニュースとなる要因だったのであって中身がただの紙切れだったら全く以てつまらない話題だ。やはり『彼』が強烈なキャラクターを放っている、という事が証明された一例だった。

ちょうどこれからの時期、街中に立ち込める『彼』の匂い。否、正確には『彼』ような匂い。ある種、金木犀と並んで秋という季節を体感させる銀杏の匂いは『彼』の匂いにかなり近いものがある。ただ不思議に思うのは、銀杏の匂いを嗅いで「『彼』の匂いのようだなぁ、銀杏は美味しいけどちょっとクサいなあ」と思うのは普通だが、逆にトイレその他で『彼』の臭いを嗅ぎ「ああ、銀杏の匂いがする。美味しそうだなあ」とはならない。当たり前のことだろうけど、やはり『彼』の強烈な存在感を感じざるを得ない。視覚的に言えば、かりん糖でも同じ事が言えるかも知れない。他のものは『彼』に例えられても『彼』は『彼』でしかないのだ。

ただ唯一、全く異なる存在価値を持つあるものと『彼』とを同列に問うかのような名フレーズがある。
「カレー味の『彼』と『彼』味のカレーどっちが良い?」
昔流行った究極の選択。ただ、この問いに僕は迷わず『彼』味のカレーを選ぶ。『彼』には悪いが美味しそうな風味であっても大腸菌は身体に悪影響を及ぼすし、銀杏やチーズも『彼』味のようなものだと解釈出来なくもないですよね。
ちなみに食物に関して言えば、昨年のイグノーベル賞は牛糞から抽出された成分で生成されたアイスクリームを開発した日本人女性であった事も付け加えて置きたい。人糞でなくて良かった。

以前読んだ知の巨人・立花隆氏の著書の中に、ヒトラーは『彼』にまみれるようなプレーを好んだ、と言うようなクダリがあった。『彼』は世界に悪名高きファシストまでも弄んでしまう程の未知なる力を秘めているという事なのであろう。

らもさんはアルコール依存性の療養中に頭からうどんがにゅるにゅると溢れ出る幻覚を見たというが、こんな事を考えてる僕の頭の中身には脳ミソの代わりに『彼』が詰まっているのではないかと些かの懸念を禁じ得ない今日この頃だ。





※その後の調べによると中崎町駅の『彼』事件、警察沙汰にはなっていなかった模様。。そりゃそうだ。。