『キング牧師とマルコムX』 上坂 昇・著

僕が黒人音楽に興味を持ったのは小学5年生の時、テレビでSワンダーを知ってからだった。中学時代もド田舎で情報の少ない中、音楽の先生にWeAreTheWorldやTake6等を教えてもらいそれを頼りに少しずつ音楽の枝葉を伸ばした気がする。



その興味は中学後半、高校時代〜現在に至るまで、アメリカの黒人に対する関心へと発展していった。今となっては有名ミュージシャン、オリンピックやプロスポーツ界で活躍する選手、有名ハリウッドスター、政治家などなど、アメリカ黒人の活躍ぶりは火を見るより明らかであり、いまや合衆国を代表する人物を多く輩出し、ついには大統領まで誕生するかも知れないという状況である。しかし、そう遠くない過去に現在のこの状況が当たり前でなかった事も事実。もともと現在の合衆国には日本人と同じ黄色人種であるネイティブアメリカン(インディアン)が先住していた。そこにヨーロッパからの白人が入植(侵略)し、アフリカから奴隷(主に南部の綿花農園)として黒人が連れて来られた。奴隷制が廃止されるのは、表向きには南北戦争が終わる1865年、つい140年程前の話である。しかし、その後もアメリカ黒人たちは長く虐げられる事となる。



そんな中、キング牧師マルコムXと言う二人のカリスマが登場する。全く異なる思想、宗教、性格を持つ二人ではあったが多くの黒人たちは彼らに何かを期待していた。キリスト教の牧師であるキング牧師は、インドのガンジーに傾倒し非暴力を提唱。公民権運動の指導者となる。ワシントン大行進における「I have a dream(私には夢がある)」はあまりにも有名である。一方のマルコムXアメリカのイスラム教団「ネイションオブイスラム」に属し(後に脱会)、どちらかと言えば暴力に屈せず抵抗すると言った過激な姿勢をとった。ただ、ワシントン大行進では相反する思想であったはずのキング牧師の後ろでサポートするかのように立っている。最終的に二人とも暗殺されると言う結末をむかえてしまうが、二人がその後の社会に残した影響・功績は言うに及ばず。



詳しい事は本書でお読みいただきたいが、本書の内容で興味深いのはプライベートな部分にも迫っていると言う事である。意外な一面、素顔を知る事で人間味を感じられた。黒人社会を知る上で欠かせない二人を理解するには読みやすい良書だと思う。



キング牧師マルコムX』 (講談社現代新書)上坂 昇 (著)

★★★★★




あ、この際、併せておすすめ・・・

・『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書)本田 創造(著)

詳しい資料からアメリカ黒人の歴史を紐解いています。



・『ルーツ 上・下』(社会思想社)アレックス・ヘイリー(著)

現在絶版ですがAmazonで購入可。

アメリカで大反響を呼んだTVドラマの原作本。

DVDボックスも必見。



・『ジャズ』―進化・解体・再生の歴史(音楽之友社)悠 雅彦(著)

大学生の頃、ジャズを始める際に読んだ本。

上記のものと併行して読むと良いかも。