『対話篇』 金城一紀・著 / 『顔のない裸体たち』 平野啓一郎・著

最近ちょくちょく読んでる金城一紀氏の中編集。

最初に読んだのはご多分に漏れず『GO』であった。『GO』と言う作品の素晴らしさは改めて語るに及ばないが、こちら『対話篇』も素晴らしい内容である。中編三話からなる本作であるが、良い意味で『GO』とは全く違う印象。多少「春樹チルドレン」な香りも。僕個人の感想としては三話目の「花」という話がひと際素晴らしかったと思う。



内容に関しては読んで字の如くやはり登場人物の”対話”で進行していく。人間、最終的な別れは「死」であるが、そこに至るまでなかなか気付けない自分にとって本当に大切なものもあるのだろう。



死が描かれるが、読後感は清々しい一冊だと思う。

まだ文庫化されていないが『映画篇』も併せてお薦め。



『対話篇』 新潮文庫

金城一紀・著

★★★★☆





三島の再来と言われた若手純文学の旗頭、平野啓一郎氏の最近文庫化された一冊。

この作品、すごいリアリティ。まるでノンフィクションを読んでいるような錯覚にさせられる。内容は、幼い頃から胸の大きさ以外なにも目立つことなく育ち、平凡な日々を過ごしている女性教師がひょんなことから出会い系サイトにはまり、そこで出会った変態性癖男に彼女の潜在的な性癖を目覚めさせられていき、その果ては・・・。といった内容であるが単なる小説というより最近よくニュースなどで耳にするネット系犯罪のルポルタージュではないかと思わせる程の微細な描写。



知的レベルの高い人ほど性に関して成熟度が高いというようなことを聞いたことがあるが、そうだとすると彼はその典型的モデルなのだろう。大学時代に書いたデビュー作『日蝕』は知的レベルというか文学的レベルが高すぎて二十歳そこそこの若者が書いたとは思えない文章。ただ面白いとも思えないのは、単に僕のレベルが全く追いつけてないだけか。。



近著『決壊』は気になるところ。僕のお気に入りエッセイ『文明の憂鬱』は平野氏が24、5歳の時に書かれたものらしいがその思慮深さ、考察力には驚かされる。併せてお薦め。



『顔のない裸体たち』 新潮文庫

平野啓一郎・著

★★★★☆