『重力ピエロ』伊坂幸太郎・著

明日から映画が公開されるという事でちょこっとレビュー。
恐らく、あくまで恐らくであるが、『重力ピエロ』は伊坂幸太郎作品の中でもっとも人気の高い作品のひとつではないだろうか。今までに伊坂作品は全てではないけど結構読んだと思う。最初に読んだのは生徒さんに借りた『陽気なギャングが地球を回す』だった。それでハマって小説はもとより映画化された『陽気な〜』『アヒルと鴨のコインロッカー』『死神の精度』は一応観ておいた。映像のほうは個人的には佐藤浩市主演の『陽気な〜』が好きだったかな。『アヒルと鴨〜』の瑛太もさすがに素晴らしかった。

さて今回映画化される重力ピエロだが、宣伝でも流れる「春が二階から落ちてきた」という印象的な一行で始まる。そして詳細は伏せるが始めの設定からかなり重い。ちなみに春とは泉水の弟。泉水は春の兄である。泉水役はここ数年人気急上昇中の加瀬亮。公開前なのであまり内容について触れるのはどうかと思うのでザックリ書くけど、とにかく最初からかなり難しい設定で伊坂お得意、絶妙に計算されたミステリーの中に家族愛、兄弟愛を見事に描いた秀作だと思う。遺伝子というものがこう使われるのか、とか。

伊坂作品は、結構、人が死ぬ。しかも、時にあっさりと、時に残酷に。『グラスホッパー』なんかは最たるものかな。その辺の描写は好き嫌いわかれるとこでもあるかも知れない。ボクはハードボイルドがあまり好みでないのでそういう描写は正直好みではないが、伊坂作品の真骨頂はやはり計算され尽くされた見事なまでのトリックと、特別な能力を持つキャラ設定の面白さ。そして何とも悲哀に満ちたと言うかでもホッコリさせるような人物描写、仮に時系列が一定でなくてもプロットがしっかりしていて迷うことなく気持ちをもっていかれる様は毎回さすがと思わされる。とどのつまり伊坂氏はカナーリ賢い。『重力ピエロ』の参考文献も相当な質と量だ。要所にちりばめられる含蓄ある雑学の豊富さにも毎回のように感服。作品によっては音楽なんかも効果的に描かれる。

明日から公開の『重力ピエロ』どういう風に映像化されてるのか是非観てみたいものである。まだ伊坂幸太郎の小説読んだことない人は是非この機会に読んでみていただきたい。ただし、『重力ピエロ』をはじめ、テビュー作『オーデュボンの祈り』本屋大賞ゴールデンスランバー』などの新潮から出てる作品は内容も量も結構なボリュームがあるので、活字がやや苦手という人にはまず短編の『チルドレン』や『死神の精度』がオススメかも。あーぁ、、てか全然書評になってないや。。すいません。。

『重力ピエロ』(新潮文庫)伊坂幸太郎・著
★★★★★