『1Q84(BOOK1・2)』村上春樹・著


活字離れと言われて久しいこのご時世、ビンボーやヤンキーをネタにした文才、商才ある芸人の俄小説でもないのに、なんだかバカ売れの兆しを見せつつある本作。さすが還暦を迎えても春樹人気は衰え知らず。事前情報が一切知らされないという戦略も奏功したのか発売から二週間ですでに100万部超えたとか超えないとか。ということは、ボクなんかが書評しなくても『1Q84』とGoogleでサクッと検索すれば、きっと山のような数の書評ブログがヒットするはずだ。とりあえず今巷でもっとも読まれ語られてる本ということなのだろうか。

とか言いつつ、少し触れてみる。

ボク思いますに、村上春樹と言う作家、もはや日本人にとってある種ひとつの「文化」になっているのだと。というのは勝手なボクの思い込みかもしれないが、例えば関西に住んでいて野球好きであれば大多数は阪神ファンであると言うように、日本人で小説を読むという習慣をもった多くはなくとも少なからざる数の人間が一度や二度は村上春樹の小説を手にするみたいな、スタンダード的なものだったり。ゲームやらないからよく分からんけど、多分ゲーム好きならドラクエファイナルファンタジーみたいな感じ、かな?それが良いことなのか否かなんて勿論どうでもいいことだけれども、とにかく常に話題の中心にいるということはそれだけで価値があると言う証明なのかもしれない。

えー、そういう穿ったしょーもない見方はさておき…

さてさて当の『1Q84』。
ゴハンを箸で一粒ずつ口に運ぶように、かなりゆっくり味わって読んだんだけど、一言で言えば、面白い。
ということになる、のかな。
良くも悪くも期待を裏切らない、村上春樹という範疇を越えない作品だったと思う。

正直ボク目線では思いのほか大差で『海辺のカフカ』に凱歌があがる感じでしょうか。何か○ーベル賞狙いにいってるようなニホイがほのかにするで候。『海辺のカフカ』は意外にも漱石でしたからねえ、タイトルこそ洋風ではあるけど中身は和の成分が散在してなんか良かったなあ。本作はバタクサイというより、んー、そもそもちょっと薄アジで、もう少しだけ味噌や醤油の味付けが欲しい感じかな。だからかもしれないけど何かに阿るような…、ノーベ○賞か…。阿るよりも、抗ってもらいたいなー。あ、あくまでボクの勝手な思い込みですが。
パラレルワールドってワケじゃないけど、独特な世界感はどことなく『アフターダーク』的なとこも感じなくもなかった。

まぁまず何と言っても文章が素晴らしいのでスラスラと読ませてしまうのだけど、そのわりに感情の振れ幅はわりと凪な作品だった。確かに良書ではあるけど名作と呼ぶには役不足な感アリ。あの分だとまだまだ三冊目、四冊目と続きそうなイキフン。

天吾と青豆とふかえりには申し訳ないけど、ナカタさんは強敵だ。ボクにとっては『海辺のカフカ』がこれからの村上春樹長編作品の試金石になるんだと思わせた作品だった。

1Q84(BOOK1・2)』村上春樹・著(新潮社)
★★★☆☆