『最近読んだ中で憶えてるものをまとめて』

前略
秋も深まってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。ブログの更新、かなり滞ってしまいました。。
読書の秋ということで、最近読んだ中からいくつかピックアップして矢継ぎ早に紹介してみます。


村上春樹河合隼雄に会いにいく』村上春樹河合隼雄
惜しくもノーベル賞に手の届かなかった村上春樹氏と、今は亡き日本のユング学派第一人者である心理学者・河合隼雄氏の対談集。ちょうど「ねじまき鳥クロニクル」「アンダーグラウンド」の頃で、今から10年程前、オウム事件後ということになる。村上作品の命題でもある「コミットメントとデタッチメント」等、様々なトピックにおいてそれぞれの分野を代表する二人の鋭い考察力と精神性に改めて感服させられた。非常に読みやすい良書。


『マイルス・ディビス自叙伝?・?』マイルス・ディビス
ジャズの帝王マイルスの濃ゆーい独白。勿論、天才の自叙伝ではあるが、この二冊を読めば粗方モダンジャズの歴史の流れが理解出来ると思う。これを読んで現在に至る「ジャズ」という音楽が高い芸術性を持ち得たのは、マイルスという存在なしでは恐らく語れないのだろうと納得させられる。本書の文章だけを読めば非常に高慢ちきな印象も持つはずなのだけど、マイルスの言葉だと思えば不思議と素直にアタマへ染込む。数十ページ毎に「尻が痛んだ」と書かれているほど尻に深刻な持病があったようだが、何となくそう言う一面からも実は飾りっけのない人なのかもしれないと受け取れる。実は表裏がなく実直で、だから憎めないんだな。興味深いエピソードも多々あり。そこでひとつ、「ドナリーの作曲者は、チャーリーパーカーではなく、マイルスである」らしい。


『寝ずの番』中島らも
購入してから数年本棚の奥で眠っていた、下ネタ小説の決定版。とは言え映画化もされた程なので下品ではないところがまた素敵だ。うーん、もう言葉は要りません。ただただ素直に笑って読めば良い一冊。こんな思考回路をもつ人、もっと長生きして欲しかったなぁ。らも師匠は永遠に不滅です。


『あるキング』伊坂幸太郎
伊坂幸太郎最新作。これまでの伊坂作品のような巧妙なミステリー作品とは一線を画す、少し毛色の違う作品だった。ネット等で目にする様々な書評では辛口なコメントも目立つが、ボクにとっては素晴らしい作品に思えた。まず野球と親子がテーマというあたりも少年野球をやっていたボクにとっては非常に取っ付きやすく、感情移入しやすかった。ましてや「アンチ巨人」で育ったあたりも。これを読んで親子のあり方とは、天才とは幸福なのか、その他にも色んなことを考えさせられた。単なるミステリー作家というカテゴリーにおさまらない伊坂氏の奥深さを感じた一冊。


『パーフェクトキス』桑島由一
仕事場の若いスタッフさんが貸してくれた、所謂ライトノベル。ボクのようなおっさんは書店でなかなか手にしない(出来ない)感じの表紙&タイトル。著者はボクと同世代でひきこもり経験者という。内容も基本的には恋愛小説であるが自分ではなかなか読まないような内容で逆に新鮮だった。いくつかの短編とポエムのようなもので構成されている。中でも「鍵穴ポエム2」「花」の二作品は興味深く読んだ。「心の闇」を経験した人の文章には、優しさの中にもどこかドロドロと鬱屈したものや空虚さ、形や言葉で形容し切れない何か強く訴えかけるものを感じる。そう言えば太宰治生誕一〇〇年だ。そうだ久々に太宰を読もう。


このブログを見ていただいたりお会いする方から本をお借りすることがあります。むかしは人のすすめる本をあまり読みたいと思わなかったのですが、最近は丸くなったのか、すすめていただく本を読むのも新しい発見があったりで楽しいものです。自分で購入するものだけになると内容も作者も偏りがちですからね。良い本あったら是非紹介してくださいませ。

草々